デビルズクロー
南アフリカ原産のハーブ。ハルパゴサイドが抗炎症・鎮痛作用を持ち関節痛に使われる。
デビルズクローとは
デビルズクロー(Harpagophytum procumbens)はナミビア・南アフリカ原産の植物で、根の活性成分はイリドイド配糖体ハルパゴサイドを中心とする。COX-2阻害、NF-κB抑制、TNF-α・IL-1β・IL-6産生抑制を介した抗炎症作用と鎮痛作用を有する。膝・腰のOAに対するハルパゴサイド50〜100mg/日を8〜16週間投与の二重盲検RCTで、WOMAC痛みスコア改善とNSAID使用量削減が報告されており、メタアナリシスでも軽度〜中等度の鎮痛効果が確認されている。エビデンスレベルB(複数RCT+系統的レビュー)。ドイツのCommission Eで筋骨格系疼痛への使用が承認されている。
目次
デビルズクロー(Harpagophytum procumbens)の概要
デビルズクロー(英名Devils Claw、学名Harpagophytum procumbens)はゴマ科ハルパゴフィツム属の多年草で、ナミビア南部、南アフリカ北部、ボツワナ西部のカラハリ砂漠周辺に自生する。果実の表面に鋭いトゲ状の鈎(フック)が密生していることが「悪魔の爪」という名前の由来である。薬用部位は地下の二次根(塊根)で、現地の伝統医学(サン族・コイコイ族)で何世紀にもわたり関節痛・腰痛・消化器症状の治療に用いられてきた。
20世紀初頭にドイツの植民者によりヨーロッパに紹介され、1950年代以降ドイツを中心に医薬品グレードのハーブ素材として研究が進んだ。ドイツ連邦保健省のCommission Eは1989年に筋骨格系の支持性疾患(loss of appetite, dyspepsia, painful musculoskeletal conditions)への使用を公式承認し、欧州医薬品庁(EMA)の植物薬モノグラフでも「軽度の関節痛・腰背部痛の対症療法」として位置づけられている。フランス、イタリア、英国でも医療用植物薬として処方されている。
活性成分はイリドイド配糖体類で、特にハルパゴサイド(harpagoside)、ハルパギド(harpagide)、プロクンビド(procumbide)が代表的である。ハルパゴサイド含量がエキスの品質指標として国際的に標準化されており、欧州薬局方ではエキス1%以上、医薬品グレードでは2.0〜4.5%含有が一般的な規格である。その他、フェニルプロパノイド類(ベルバスコシド、シリンガレシノール)、フラボノイド、フェノール酸も含まれ、これらが複合的に薬理活性を支えている。
膝関節領域では、複数の二重盲検RCTでハルパゴサイド標準化エキス50〜100mg/日(エキス重量で500〜2400mg/日)を8〜16週投与した結果、WOMAC痛み・機能スコアの有意な改善とNSAID使用量の削減が報告されている。Brienら2006年の系統的レビューやChrubasikらの一連の研究により、軽度〜中等度の鎮痛・抗炎症効果が確認されており、エビデンスレベルB(複数RCT+系統的レビュー)に分類される。NSAIDより消化器副作用が軽い点が長期管理上の臨床的価値を高めている。
デビルズクローとは何か
デビルズクローはゴマ科(Pedaliaceae)ハルパゴフィツム属(Harpagophytum)の多年草で、薬用に用いられるのは Harpagophytum procumbens(一般的なデビルズクロー)と Harpagophytum zeyheri の二種である。両種ともイリドイド配糖体ハルパゴサイドを含むが、含量と他成分プロファイルがやや異なるため、欧州薬局方では H. procumbens を主要な医薬品原料として規定している。地下の二次根(塊根、secondary tuber)が薬用部位で、地上部や主根(一次根)は薬効が低いため使用されない。
分類上、デビルズクロー製剤は乾燥粉末、水抽出エキス、エタノール/メタノール抽出エキス、超臨界CO2抽出エキスに大別される。臨床試験で使用されるのは多くが水抽出または弱極性溶媒抽出エキスで、ハルパゴサイド含量1〜5%で標準化されたものが主流である。代表的な医薬品エキスはドイツ発のWS 1531(Doloteffin)、SteiHap 69、LI 174などで、それぞれハルパゴサイド含量2.0〜2.5%、抽出比 DER(Drug-Extract Ratio)1.5:1〜3:1で標準化されている。
原料の品質は産地、収穫時期、塊根の年齢、抽出条件によって大きく変動する。ナミビア政府は1977年に野生塊根の保護のため輸出規制を導入しており、現在は持続可能な収穫管理(CITESでは規制対象外だがCBD/Nagoya Protocol対象)と部分的な栽培化が進められている。日本ではハーブティー素材や機能性食品成分として流通しており、医療機関で処方されることはほぼないが、薬局・通販でハルパゴサイド含量が標準化されたカプセル製品が入手可能である。サプリメント選択時はハルパゴサイド含量表示の有無と、Harpagophytum procumbens(H. zeyheri ではなく)であることを確認したい。
デビルズクローの作用機序
経口摂取されたハルパゴサイドは、上部小腸で吸収されたあと腸内細菌の β-グルコシダーゼによりアグリコン体のハルパギゲニン(harpagogenin)に変換される。ハルパギゲニンが主要な活性代謝物の一つとされ、血中Tmaxは約1.5〜2時間、半減期は約3〜6時間とされる。胃酸性条件下ではハルパゴサイドが分解されやすいため、腸溶性カプセル製剤や食後摂取により安定化することが製剤設計上重視される。組織分布として滑膜、肝臓、腎臓への移行が動物実験で示されている。
抗炎症作用の中核機序は、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の選択的阻害と、核因子NF-κB経路の抑制である。in vitroおよびex vivo研究で、ハルパゴサイドはLPS刺激下のヒト単球・マクロファージにおいてCOX-2発現とPGE2産生を抑制し、5-LOX阻害も部分的に示している。NF-κB経路の核内移行抑制を介して、IL-1β、TNF-α、IL-6など炎症性サイトカインの転写を低下させる作用も報告されており、これらは膝OAの滑膜炎・軟骨基質分解を促進する炎症メディエーターを上流で抑制する機序である。
軟骨マトリックス保護作用として、in vitro研究ではハルパゴサイドがIL-1β刺激下のヒト軟骨細胞においてマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1、MMP-3、MMP-9、MMP-13)の発現を抑制し、II型コラーゲンとアグリカン分解を抑える方向に働くことが報告されている。これは軟骨「破壊酵素」の抑制を介した長期的な軟骨保護の理論的根拠となる。さらにiNOS発現抑制を介してNO産生を低下させ、軟骨細胞アポトーシス抑制にも寄与する可能性が示唆されている。
鎮痛作用の機序として、デビルズクローはCOX-2阻害を介したプロスタグランジン産生抑制が主である。さらにオピオイド系受容体への直接作用は確認されていないが、脊髄レベルでの侵害受容シグナル抑制と、関節局所での炎症性メディエーター減少による末梢感作の緩和が複合的に鎮痛効果に寄与すると考えられている。動物モデル(カラギーナン誘発関節炎、コラーゲン誘発関節炎)でも用量依存的な鎮痛・抗炎症効果が再現されており、薬理学的根拠は比較的しっかりしている。総じてデビルズクローの作用機序は「COX-2・NF-κB・MMP抑制を介した抗炎症・鎮痛・軟骨保護」と要約でき、選択的COX-2阻害剤と類似の上流機序を持つ植物由来成分として位置づけられる。
デビルズクローの臨床エビデンス
デビルズクローは欧州(特にドイツ)で1980年代から1990年代にかけて医薬品グレードのハーブ素材として臨床研究が蓄積されており、変形性膝関節症と慢性腰痛に対するRCTが複数報告されている。代表的な試験はChantreら(2000年、Phytomedicine)の二重盲検比較試験で、変形性関節症(膝・股関節)患者122名にデビルズクロー乾燥粉末2400mg/日(Harpadol、ハルパゴサイド57mg/日)あるいはOA治療薬ジアセレイン100mg/日を4ヶ月投与した結果、両群とも疼痛・機能・全体評価のすべての指標で同等の改善を示し、デビルズクロー群でNSAID使用量がジアセレイン群より有意に少なかった。
Wegenerら(2003年、Phytomedicine)の二重盲検プラセボ対照RCTでは、変形性膝・股関節OA患者89名にデビルズクローエキスWS 1531(ハルパゴサイド60mg/日)を12週投与し、WOMAC痛みスコアの有意な改善を確認した。Chrubasik ら(2003年、Rheumatology)はデビルズクロー(ハルパゴサイド60mg/日)と選択的COX-2阻害剤ロフェコキシブ(25mg/日)の比較試験を腰痛で実施し、両群とも同等の鎮痛効果を示した。複数の慢性腰痛RCT(Chrubasikら2000年、2002年)でも一貫した有効性が報告されている。
系統的レビューとして、Brienら(2006年、J Altern Complement Med)は12 RCT を統合解析し、デビルズクローエキスがハルパゴサイド30〜100mg/日で慢性腰痛と変形性関節症に対して中等度の有効性を示すと結論した。Cochrane Database では Gagnier ら(2006年、Cochrane Database Syst Rev)が慢性腰痛に対するハーブ療法の系統的レビューでデビルズクローを「中等度のエビデンス」として評価している。Long ら(2001年、Rheumatology)の系統的レビューでも同様の結論が報告されている。
ガイドライン上の位置づけとして、ドイツ連邦保健省のCommission Eでは「変形性関節症および慢性腰痛の支持的治療」として公式承認されており、欧州医薬品庁(EMA)の植物薬モノグラフでも「軽度の関節痛・腰背部痛の対症療法」として位置づけられている。AAOS(米国整形外科学会)の膝OA診療ガイドラインでは独立した推奨は記載されていないが、欧州を中心とした補完代替医療レビューでは、ジンジャー・クルクミン・ボスウェリアと並ぶ抗炎症ハーブの選択肢として言及される。総合的にデビルズクローの膝OAに対するエビデンスレベルはB(複数の中規模RCT+系統的レビュー、Commission E承認)と評価できる。
デビルズクローの推奨用量・タイミング・継続期間
変形性関節症・腰痛症状改善目的でのデビルズクロー推奨用量は、臨床試験プロトコルからハルパゴサイド換算で50〜100mg/日が標準範囲である。エキス重量では製品により異なり、Chantre ら2000年RCTでは乾燥粉末2400mg×3回/日(合計7200mg/日、ハルパゴサイド57mg/日)、Wegenerら2003年RCTではエキスWS 1531(ハルパゴサイド30mg含有)を1日2回(合計60mg/日)が採用された。Commission EとEMAモノグラフでは1日量としてエキス2.0〜4.5g(ハルパゴサイド換算で50〜100mg)が推奨されている。下限はハルパゴサイド30mg/日、上限はハルパゴサイド100mg/日が現実的な使用域である。
製品形態は錠剤・カプセル・粉末・液状エキスがあり、原料の標準化レベルが品質を左右する。ハルパゴサイド含量1.0〜5.0%で標準化されたエキス(DER 1.5:1〜3:1)が臨床用途に適している。1カプセルあたりエキス500mg(ハルパゴサイド10〜25mg)、あるいは粉末400〜800mgが標準的な製品規格である。日本国内ではハルパゴサイド含量を明示した製品は限定的だが、欧州輸入製品やアフィリエイトサプリで入手可能である。サプリメント選択時はハルパゴサイド含量と Harpagophytum procumbens 由来であることを必ず確認したい。
摂取タイミングは食後が原則である。空腹時摂取で胃部不快感を訴える人がいるため、食事と一緒に水で飲む。1日量を朝・昼・夜の3回、あるいは朝・夜の2回に分割するのが臨床試験プロトコルでも一般的で、半減期が3〜6時間とされることから、分割摂取で血中濃度を維持する方が理に適っている。胃酸性下でハルパゴサイドが分解されやすいため、腸溶性カプセル製剤がある場合はそちらが理論的に有利だが、通常製剤でも食後摂取と十分な水分量で問題なく吸収される。
継続期間は最低8週間、効果の安定評価には3〜6ヶ月の継続が推奨される。Chantreら2000年RCTは4ヶ月投与で症状改善を示しており、効果実感は2〜4週で得られることもあるが、評価は最低3ヶ月で行うのが妥当である。膝OAは慢性疾患であるため、症状の変動を観察しながら長期的に継続することが想定される。摂取中止後の効果持続については数週間〜1ヶ月で減衰するという報告があり、継続摂取を前提とした管理が現実的である。3ヶ月で効果実感が乏しい場合は他成分への切り替えや併用戦略の見直しを検討する。
デビルズクローの副作用・相互作用・禁忌
デビルズクローは欧州で30年以上の医薬品ハーブとしての使用実績があり、推奨用量範囲(ハルパゴサイド50〜100mg/日)での安全性プロファイルは良好と評価されている。臨床試験で報告される軽度の有害事象は消化器症状が中心で、胃部不快感、軽度の悪心、軟便、まれに頭痛が報告される。Brienら2006年系統的レビューでも、有害事象発現率はプラセボと同程度かやや高い程度(NSAIDより明らかに低い)で、重篤な有害事象はほぼ報告されていない。Commission EとEMAモノグラフでも、推奨用量での重大な毒性懸念は指摘されていない。
注意が必要な相互作用として、デビルズクローはCYP2C9、CYP2C19、CYP3A4を介した薬物代謝への影響がin vitro研究で報告されている。ワーファリン(CYP2C9基質)との併用でINR上昇や紫斑を報告した症例報告があり、抗凝固薬・抗血小板薬服用中の方は主治医に相談のうえ開始し、定期的な凝固能モニタリングが推奨される。SSRI/SNRI(CYP2C19、CYP3A4基質)、カルシウム拮抗薬(CYP3A4基質)、スタチン系(CYP3A4基質)など主要な肝代謝薬を服用中の方も、薬剤血中濃度が変動する理論的可能性に注意したい。
糖尿病薬との併用では、デビルズクローが軽度の血糖低下作用を示す動物実験報告があり、メトホルミン・SU薬・インスリンと併用する場合は血糖モニタリングを継続するのが望ましい。胃酸分泌促進作用があるため、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の活動期や胃食道逆流症(GERD)の症状が強い時期は使用を避けるのが安全である。胆汁分泌促進作用もあるため、胆石症既往者は使用前に主治医と相談することが推奨される。
禁忌・特定集団への注意として、妊婦・授乳婦に対する安全性データは限定的で、子宮収縮作用の動物実験報告があるため妊娠中の使用は禁忌とされる(Commission E、EMAモノグラフでも妊娠中使用は禁忌)。授乳中の使用も推奨されない。小児(12歳未満)に対する安全性・有効性データも限定的で、子供への使用は専門医の判断のもとで行うべきである。手術予定がある場合は、抗血小板作用とCYP代謝への影響への配慮から少なくとも2週間前までに中止するのが一般的推奨である。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の活動期、胆道閉鎖症、重度の心血管疾患患者では使用を避ける。Harpagophytum 属植物アレルギー(極めて稀)の既往がある場合も使用を避ける。
デビルズクローの飲み方と他療法との併用
デビルズクローエキスの摂取は食前または食後どちらでも可能だが、苦味が強いため食後に水とともに摂取するほうが嚥下しやすい。臨床試験プロトコルでは1日量を2〜3回に分割して摂取するレジメンが一般的で、Wegenerら2003年RCTではWS 1531を1日2回(合計ハルパゴサイド60mg/日)で12週間投与し、Chantreら2000年RCTではHarpadol(DER 1.5:1)2400mg×3回/日(合計ハルパゴサイド57mg/日)を4ヶ月投与した。継続期間は最低8週間、効果評価には3〜6ヶ月の継続が推奨される。
変形性関節症の保存療法における位置づけとして、デビルズクローは運動療法・体重管理・温熱療法など非薬物療法の補完として使用するのが理に適っている。Chantreら2000年RCTではデビルズクロー単独群がジアセレイン(OA治療薬)と同等の症状改善を示し、Wegenerら2003年RCTではNSAID使用量が併用群で有意に減少した。慢性的にNSAIDを使い続けたくない患者の長期管理戦略として、ジンジャー、クルクミン、ピクノジェノールなどと並ぶ抗炎症ハーブの選択肢である。
他のサプリメントとの併用では、グルコサミン・コンドロイチン・コラーゲンペプチドなど軟骨基質成分との併用は理論的に補完関係にある。デビルズクローは炎症・酸化ストレスを抑制する「軟骨破壊側のブレーキ」、軟骨基質成分は「軟骨基質再生のアクセル」として、膝OA病態の異なる側面に同時にアプローチできる。ジンジャー・クルクミン・ボスウェリアなど他の抗炎症ハーブとの併用は機序の重複が補強し合う可能性があるが、出血リスク増強の懸念があるため必要以上の積み重ねは避けたい。
飲み合わせの注意点として、デビルズクローは胃酸分泌を促進する可能性があり、空腹時摂取で胃部不快感を訴える人がいる。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の活動期や、胃食道逆流症(GERD)の症状が強い時期は使用を避けるのが安全である。CYP2C9、CYP2C19、CYP3A4を介した薬物代謝への影響がin vitroで報告されており、ワーファリン(CYP2C9基質)、SSRI(CYP2C19基質)、カルシウム拮抗薬(CYP3A4基質)など主要な肝代謝薬を服用中の方は主治医に相談したうえで開始するのが安全側である。胆石症の既往者は胆汁分泌促進作用があるため使用前に主治医と相談することが推奨される。
他成分との比較・併用
抗炎症ハーブ系成分として、デビルズクローはジンジャー、クルクミン(ターメリック)、ボスウェリア、ピクノジェノールなどと比較される。これら成分はいずれもCOX/LOX経路あるいはNF-κB経路を介した抗炎症作用を持つが、デビルズクローの特徴はCOX-2阻害とNF-κB抑制、TNF-α・IL-1β・IL-6産生抑制を介した複合的な抗炎症作用に加え、欧州(特にドイツ)でCommission E公式承認を取得した正規医薬品ハーブとしての地位を持つ点である。エビデンス水準も比較的高く、複数のRCTと系統的レビューで一貫した症状改善が示されている。
軟骨基質成分(グルコサミン、コンドロイチン、UC-II)との比較では、作用機序が根本的に異なる。グルコサミンは軟骨マトリックスの構成糖鎖前駆体、UC-IIは免疫寛容を介する自己免疫性炎症抑制、コンドロイチンは軟骨基質成分そのものであり、いずれも軟骨「再生・補充」側の作用が中心である。一方、デビルズクローは炎症・酸化ストレス・軟骨破壊酵素を抑制する「軟骨破壊側のブレーキ」として作用する。両者を組み合わせることで膝OA病態の異なる側面に同時にアプローチできる可能性がある。
NSAIDとの比較では、Chrubasikら2003年RCTでデビルズクロー(ハルパゴサイド60mg/日)が選択的COX-2阻害剤ロフェコキシブ(25mg/日)と同等の鎮痛効果を示した(ただし効果サイズはロフェコキシブよりやや小さい)。即効性ではNSAIDが勝るが、長期使用時の胃腸・腎・心血管副作用がNSAIDの大きな課題で、デビルズクローはNSAID削減・補助療法としての位置づけが現実的である。
結論として、デビルズクローは「抗炎症ハーブ系成分」群の中で、欧州での正規医薬品ハーブとしての公認度とエビデンス蓄積に優れた選択肢である。グルコサミン・コンドロイチンなど軟骨基質系との併用、ジンジャー・クルクミンなど他の抗炎症ハーブとの併用(ただし出血リスク管理に注意)が現実的で、特に腰痛と膝OAを同時に管理したい場合に有用な選択肢である。
デビルズクローに関するよくある質問
Qデビルズクローは飲み始めてからどのくらいで効果を実感できますか?
臨床試験では8週間(Wegenerら2003年)あるいは4ヶ月(Chantreら2000年)の継続投与でWOMAC痛み・機能スコアの有意改善が報告されています。早い人では2〜4週で違和感の軽減を感じることもありますが、効果の安定評価には最低8週間、症状の変動も含めた評価には3〜6ヶ月の継続が推奨されます。即効性のあるNSAIDとは異なり、炎症の累積的な抑制を介して効果が表れるため、長期視点での評価が重要です。
Qワーファリンや他の薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?
デビルズクローはCYP2C9、CYP2C19、CYP3A4を介した薬物代謝への影響が報告されており、ワーファリンとの併用でINR上昇・紫斑の症例報告があります。SSRI、カルシウム拮抗薬、スタチン系など主要な肝代謝薬を服用中の方は薬剤血中濃度が変動する理論的可能性があるため、必ず主治医に相談のうえで開始してください。手術予定がある場合は2週間前までに中止が推奨されます。
Q1日の推奨用量はどれくらいですか?
欧州Commission EとEMA植物薬モノグラフでは、エキス2.0〜4.5g/日(ハルパゴサイド換算で50〜100mg/日)が推奨用量範囲です。臨床試験プロトコルではハルパゴサイド換算30〜100mg/日が採用されています。製品により含量が異なるためハルパゴサイド含量表示を確認し、製品ラベルの目安量を守ってください。摂取は食後に2〜3回分割で水と一緒に飲みます。
Q妊娠中・授乳中でも飲めますか?
妊娠中の使用は禁忌です。動物実験で子宮収縮作用が報告されており、Commission EとEMAモノグラフでも妊娠中使用は禁忌とされています。授乳中の安全性データも限定的で推奨されません。妊娠を計画している方も含めて使用を避け、関節症状管理目的での代替成分(グルコサミン、コラーゲンペプチドなど)について産婦人科医や栄養士に相談してください。
Q胃が弱い人や潰瘍既往者でも飲めますか?
デビルズクローは胃酸分泌促進作用があるため、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の活動期や胃食道逆流症(GERD)の症状が強い時期は使用を避けるのが安全です。過去に潰瘍既往があり現在症状が落ち着いている方でも、必ず食後に水とともに摂取し、胃部不快感が出た場合は中止してください。プロトンポンプ阻害薬を服用中の方は主治医に相談のうえで開始することが推奨されます。胆石症既往者も胆汁分泌促進作用への配慮から事前相談が必要です。
参考文献・出典
- [1]Efficacy of Harpagophytum procumbens (Harpadol) in patients with osteoarthritis of the hip and knee- Phytomedicine 2000; Chantre P et al.
変形性関節症患者122名にデビルズクロー(Harpadol、ハルパゴサイド57mg/日)またはジアセレイン100mg/日を4ヶ月投与し、両群同等の症状改善を示した二重盲検比較試験。
- [2]Efficacy of a Harpagophytum procumbens extract (WS 1531) in osteoarthritis of the hip and knee: a 12-week randomized, double-blind, placebo-controlled trial- Phytomedicine 2003; Wegener T, Lupke NP
膝・股関節OA患者89名にデビルズクローエキスWS 1531(ハルパゴサイド60mg/日)を12週投与し、WOMAC痛みスコアの有意改善を示したRCT。
- [3]A randomized double-blind pilot study comparing Doloteffin and Vioxx in the treatment of low back pain- Rheumatology (Oxford) 2003; Chrubasik S et al.
慢性腰痛患者88名にデビルズクロー(ハルパゴサイド60mg/日)あるいはロフェコキシブ25mg/日を6週投与し、両群同等の鎮痛効果を示したRCT。
- [4]Devil''s claw (Harpagophytum procumbens) for osteoarthritis and low back pain: a systematic review- BMC Complement Altern Med 2008; Brien S et al.
12 RCT を統合解析し、デビルズクローエキスがハルパゴサイド30〜100mg/日で慢性腰痛とOAに中等度の有効性を示すと結論した系統的レビュー。
- [5]Herbal medicine for low back pain- Cochrane Database Syst Rev 2006; Gagnier JJ et al.
慢性腰痛に対するハーブ療法の系統的レビュー。デビルズクローを中等度のエビデンスとして評価。
- [6]European Union herbal monograph on Harpagophytum procumbens- European Medicines Agency (EMA)
欧州医薬品庁による Harpagophytum procumbens の植物薬モノグラフ。推奨用量、適応、安全性、相互作用を網羅。
- [7]Management of Osteoarthritis of the Knee (Non-Arthroplasty) Evidence-Based Clinical Practice Guideline- American Academy of Orthopaedic Surgeons (AAOS)
米国整形外科学会による膝OA非手術的治療ガイドライン。
関連項目・記事
執筆者
ひざ日和編集部
編集部
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