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轢音(クレピタス)

膝の屈伸時にゴリゴリ・ミシミシと感じる軋み音。軟骨摩耗や半月板損傷で生じる代表的な所見。

ポイント

轢音(クレピタス)とは

轢音(れきおん)あるいはクレピタス(crepitus)とは、関節を動かしたときに感じるザラザラ・ミシミシ・ジャリジャリといった軋み音や振動の総称です。生理的なクレピタスは関節液の気泡破裂による「ポキッ」という単発音で病的意義はありませんが、変形性膝関節症などで軟骨が摩耗すると、骨同士の擦れによる連続的な軋み音や振動が生じ、進行のサインとなります。痛みや腫れを伴う場合は早めの整形外科受診が推奨されます。

目次

クレピタスの定義と医学的位置づけ

クレピタスは「軋む」「砕ける」を意味するラテン語の crepere に由来する医学用語で、関節内・関節周囲組織から発生する触知可能あるいは聴取可能な異音や振動を指します。日本語では轢音(れきおん)または軋轢音(あつれきおん)と訳され、整形外科の診察では膝関節の変性を評価する重要な徴候のひとつです。

クレピタスは大きく生理的クレピタスと病的クレピタスに分けられます。生理的クレピタスは関節液中に溶け込んだ二酸化炭素や窒素が陰圧で気泡となり破裂する現象で、指の関節がポキッと鳴る音と同じメカニズムです。痛みを伴わず単発で消失するのが特徴で、若年者の膝でも頻繁に起こります。これに対し病的クレピタスは関節軟骨の表面荒れや摩耗、滑膜の肥厚、関節内遊離体などが原因で、関節を動かすたびに反復して発生し、しばしば痛みや可動域制限を伴います。変形性膝関節症(OA)では病的クレピタスがよく観察され、その種類と頻度は軟骨摩耗の進行度を反映するため、診察時の触診とMRI評価で病態を把握する手がかりになります。

音の種類と進行段階

クレピタスはその音色から、おおまかに3段階の進行と対応します。初期では「ポキッ」「パキッ」という乾いた弾発音が中心で、軟骨表面の毛羽立ちや滑膜のヒダが弾ける段階に相当します。動作時に時々鳴る程度で痛みや腫れは目立ちません。中期になると「ミシミシ」「ギシギシ」といった連続性のある軋み音に変わり、軟骨の部分摩耗で表面のザラつき同士が擦れている状態を示します。階段昇降や立ち上がり時に違和感や軽い痛みを伴うことが増えます。

末期では「ゴリゴリ」「ジャリジャリ」と砂を噛むような重い音と振動になり、軟骨がほぼ消失して骨同士が直接接触しています。X線検査では関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨の硬化像が確認され、痛みや可動域制限が強く日常生活に支障を来します。一方で、半月板損傷や関節内遊離体(関節ねずみ)が原因のクレピタスは、特定の動作で「カクン」「ガクッ」と引っかかるような音や脱力感(ロッキングや giving way)として現れ、変形性膝関節症の進行段階とは別パターンです。音の質と頻度、痛みの有無を医師に正確に伝えることが、原因疾患の鑑別に役立ちます。

轢音の臨床的意義

轢音は変形性膝関節症の早期サインの一つで、軟骨表面の不整化を反映する。痛みを伴わない轢音は無症候性の関節変化を示すことが多く、加齢とともに頻度が増える。一方、痛みや腫脹を伴う轢音は関節炎症や半月板損傷の可能性が高く、画像精査の対象となる。

轢音の発生機序は単純ではなく、軟骨摩耗・半月板損傷・滑膜のひだ(プリカ症候群)・遊離体・空気の発生(キャビテーション)など複数の要因が関与する。健康な人でも関節を急に動かしたときの「ポキッ」音は無害な現象として知られている。轢音そのものを治療する必要はなく、随伴する痛みや機能制限の有無を中心に評価し、原因疾患の治療を行うのが基本的な考え方である。

クレピタスによくある質問

Q膝のポキポキ音は変形性膝関節症のサインですか?

単発で痛みのないポキ音は生理的クレピタスである可能性が高く、すぐに病気を心配する必要はありません。ただし、頻度が増えて連続的なミシミシ音やジャリ音に変わってきた場合、痛みや腫れを伴う場合は変形性膝関節症の進行サインの可能性があり、整形外科でX線とMRIによる評価を受けることをおすすめします。

Q音を消すストレッチや運動はありますか?

大腿四頭筋を中心とした下肢筋力強化と体重管理は、関節への負荷を減らしてクレピタスの頻度や強さを軽減させることが報告されています。特に有効なのは、椅子に座っての膝伸ばし運動、軽いウォーキング、水中歩行などの低衝撃運動です。一方、深いスクワットや正座、しゃがみ込みなど膝に強い圧をかける動作は症状を悪化させやすいため避けます。

Qヒアルロン酸注射でクレピタスは治りますか?

ヒアルロン酸注射は関節液の粘弾性を回復させ、軟骨表面の摩擦を一時的に軽減することで音の頻度や強さを和らげる効果が期待できます。ただし、消失した軟骨を再生させる作用はないため、根本的に音をなくす治療ではなく、痛みと動きの改善を目的とした補助療法です。重度の変形では効果が限定的になります。

Qどんなときに病院を受診すべきですか?

音と一緒に痛み・腫れ・熱感がある、階段や立ち上がりで膝崩れ感がある、ジャリジャリ音が日常的に出ている、可動域が狭くなってきた、これらのいずれかに該当する場合は整形外科の受診が望まれます。早期受診で運動療法・装具・ヒアルロン酸注射などの保存療法で進行を緩やかにできる可能性があります。

参考文献・出典

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執筆者

ひざ日和編集部

編集部

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