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骨切り術

骨を切って配列を矯正する手術の総称。変形性膝関節症ではHTO・DFOなどで荷重分布を変えて関節を温存する。

ポイント

骨切り術とは

骨切り術(こつきりじゅつ、英: osteotomy)とは、骨を意図的に切離してアライメント(骨配列)を矯正する手術の総称です。膝関節領域では脛骨近位部を切る高位脛骨骨切り術(HTO)と大腿骨遠位部を切る大腿骨遠位骨切り術(DFO)が代表的で、変形性膝関節症の片側コンパートメント摩耗例で内反(O脚)または外反(X脚)変形を矯正します。荷重を健常な関節面へ移動させることで関節を温存できる利点があり、人工膝関節置換術より活動性の高い生活が可能なため、比較的若年で活動性の高い患者に選択される術式です。

目次

骨切り術の定義と歴史的位置づけ

骨切り術は、骨を計画的に切離して矯正することで、関節面への荷重分布を変えたり、骨格の配列異常を修正したりする再建外科手技です。膝関節領域では1958年にヤコブセンが高位脛骨骨切り術を、1965年にコベントリーが楔状骨切り術を体系化したのを契機に世界的に普及しました。日本では人工関節置換術が広まった1990年代以降に手術件数は一時減少したものの、2010年以降のロッキングプレートの登場と早期荷重プロトコルの確立で再び評価が高まり、若中年の活動性の高い変形性膝関節症患者に対する標準術式の一つとして位置づけられています。

膝関節の骨切り術には主に2種類があります。高位脛骨骨切り術(HTO)は脛骨近位部で骨を切り、内側型変形性膝関節症のO脚(内反変形)を矯正して荷重軸を外側へ移動させる手術です。大腿骨遠位骨切り術(DFO)は大腿骨遠位部で骨を切り、外側型変形性膝関節症のX脚(外反変形)を矯正します。HTOには楔状骨片を入れて開大するopen wedge HTOと、楔状骨片を切除して閉じるclosed wedge HTOがあり、現在は小切開で済むopen wedge HTOが主流です。

日本整形外科学会の変形性膝関節症診療ガイドラインでは、骨切り術は「関節温存手術」として、年齢・活動性・関節破壊の程度・体重・併存疾患を総合評価したうえで適応を決定する術式と位置づけられています。人工膝関節置換術(TKA)が60歳以上の進行例で標準的なのに対し、骨切り術は45〜65歳、KL分類GradeII〜III、片側コンパートメントの摩耗例、ACL機能温存例、BMI 30未満などの条件を満たす症例で選択されます。

適応・術式の流れ・術後経過

膝の骨切り術の適応は、片側コンパートメントに限局した変形性膝関節症で、対側コンパートメントが温存されている症例が中心です。具体的にはKellgren-Lawrence分類のGrade IIからIIIで、関節リウマチや感染性関節炎の既往がない、ACL機能が温存されている、関節可動域が良好(屈曲100度以上、伸展不全10度以下)、BMIが概ね30未満、活動性が高くスポーツや肉体労働への復帰を希望するなどの条件を満たす場合に適応となります。

術式は、open wedge HTOでは脛骨近位内側に楔状の切離を入れ、術前計画通りの矯正角度まで開大したうえでロッキングプレートで固定し、開いた骨欠損部に自家骨や人工骨を充填します。手術時間は概ね1.5〜2.5時間、出血量は400〜800mL程度です。術後は手術翌日からCPMによる関節可動域訓練を開始し、おおむね術後2週間以内に部分荷重歩行、6週間で2/3荷重、8〜12週で全荷重を目指します。スポーツへの復帰は6ヶ月から1年が標準的とされています。

長期成績としては、適切な症例選択がなされた場合の10年生存率(再手術や人工膝関節置換術への転換がないこと)が80〜90パーセントと報告されており、若中年の患者にとって関節温存と活動性維持を両立させる重要な選択肢です。骨切り術後にTKAが必要になった場合も、骨切り術を経ていない患者と比べて成績の差はほとんどないとされ、「将来TKAへの橋渡し手術」としての役割も担います。合併症として遅延癒合・偽関節・腓骨神経麻痺・深部静脈血栓症などがあり、専門医による術前評価と術中・術後管理が予後を決定します。

膝の骨切り術の種類と意義

HTO(高位脛骨骨切り術)は内側型OAでO脚を矯正する代表的な術式。DFO(大腿骨遠位骨切り術)は外側型OAでX脚を矯正する。いずれも自分の膝関節を温存できるため、TKAより活動性の高い生活が可能で、肉体労働やスポーツへの復帰に有利。脚長への影響が少なく、将来TKAへの転換手術もスムーズに行える利点がある。

骨切り術の適応はKL Grade I〜III・年齢45〜65歳・ACL機能温存・関節可動域良好・BMI 30未満などの条件を満たす症例で、慎重な術前評価が予後を決める。手術時間は1.5〜2.5時間、術後は6週間の松葉杖部分荷重・3〜4ヶ月で完全荷重・スポーツ復帰は6ヶ月〜1年が標準。プレート固定の進歩で固定強度が向上し、近年は早期荷重プロトコルも普及している。

骨切り術によくある質問

Q骨切り術と人工膝関節置換術はどう違いますか?

骨切り術は自分の関節を温存して骨のアライメントを変えることで荷重を健常な関節面へ移す手術で、活動性の高い生活が可能です。一方、人工膝関節置換術は摩耗した関節面を人工材料に置き換える手術で、痛みの除去効果は確実ですが深屈曲や激しいスポーツは制限されます。年齢・活動性・関節破壊の程度に応じて使い分けます。

Q術後はどれくらいで歩けるようになりますか?

近年のロッキングプレートを用いたopen wedge HTOでは、術後翌日から関節可動域訓練を開始し、術後1〜2週間で部分荷重歩行が可能になります。完全荷重歩行は概ね術後8〜12週、スポーツ復帰は術後6ヶ月から1年が一般的な目安です。骨癒合の進行を確認しながら荷重を増やすため、医師の指示に従って段階的に活動量を増やしてください。

Q骨切り術の効果はどれくらい持続しますか?

適切な症例選択ができれば10年生存率が80〜90パーセント、15年生存率が70パーセント程度と報告されています。「生存率」とは再手術や人工膝関節置換術への転換がないことを意味します。年齢・体重・活動内容・元の変形の程度などで個人差が大きく、術後の体重管理と適度な運動継続が長期成績に影響します。

Q骨切り術の後に人工膝関節置換術はできますか?

はい、可能です。骨切り術後に変形性膝関節症が進行した場合、人工膝関節置換術への転換手術が選択肢となります。骨切り術を経た膝でもTKAの長期成績は骨切り術を経ていない症例と大きな差がないと報告されており、骨切り術は「将来のTKAへの橋渡し」としての役割も担う術式です。

参考文献・出典

  • [1]
    変形性膝関節症- 日本整形外科学会

    骨切り術を含む膝OAの手術選択肢と適応に関する公的解説

  • [2]
    変形性膝関節症診療ガイドライン2023- Minds ガイドラインライブラリ/日本整形外科学会

    骨切り術の適応基準と長期成績に関する診療ガイドライン

  • [3]
    高位脛骨骨切り術の長期成績- J-STAGE 日本整形外科学会雑誌

    open wedge HTOの臨床成績と関節温存効果に関する原著研究

  • [4]
    変形性関節症- MSDマニュアル プロフェッショナル版

    骨切り術の手術原理と人工関節置換術との比較に関する医療従事者向け総説

関連項目・記事

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執筆者

ひざ日和編集部

編集部

膝の健康に関する情報を発信。医学的な根拠と専門家の知見をもとに、膝の痛みや不調に悩む方に役立つ情報をお届けしています。