骨髄
骨の内部にある造血組織と脂肪組織。膝周囲では骨髄浮腫が変形性膝関節症の進行や疼痛と関連する。
骨髄とは
骨髄(こつずい)とは、骨の内腔(髄腔)を満たす柔らかい組織のことで、造血幹細胞・脂肪細胞・血管網を含む生体の重要な組織です。年齢とともに造血機能を持つ赤色骨髄は減少し、脂肪に富む黄色骨髄に置き換わっていきます。膝関節周囲では、変形性膝関節症や半月板損傷で骨髄浮腫(MRIで高信号として現れる骨内の浮腫性変化)が認められ、痛みの原因や進行のサインとして注目されています。
目次
骨髄の構造と分布
骨髄は長管骨の髄腔と海綿骨の骨梁間に存在する柔らかい組織で、機能と外観の違いから赤色骨髄と黄色骨髄に分けられます。赤色骨髄は造血幹細胞を多く含み、赤血球・白血球・血小板を産生する活発な造血組織で、生まれたばかりの新生児ではほぼすべての骨髄が赤色骨髄です。年齢とともに造血機能の比重が変わり、四肢の長管骨では脂肪細胞優位の黄色骨髄に置き換わっていく一方、椎体・胸骨・骨盤・近位上腕骨・近位大腿骨など中軸骨格を中心に赤色骨髄が成人期も保持されます。
赤色骨髄では骨髄ストローマ細胞(間葉系幹細胞や脂肪細胞、内皮細胞)が造血の場(ニッチ)を提供し、造血幹細胞の自己複製と分化を支えています。骨髄洞様毛細血管が密に走り、新たに作られた血球はこの血管壁を通って末梢血へ移動します。骨髄は造血だけでなく、間葉系幹細胞による骨・軟骨・脂肪などへの分化や、骨組織の代謝維持にも関わる多機能な組織です。
膝関節周囲の大腿骨遠位・脛骨近位は、成人では黄色骨髄が優位ですが、貧血や慢性疾患によって赤色骨髄に再変換されることがあり、MRI 上で骨髄信号変化として観察されます。
骨髄に関連する主な病態と臨床的意義
膝関節領域でもっとも臨床的に重要なのが骨髄浮腫(bone marrow edema、BME)です。MRI で水信号(T2 強調画像で高信号、脂肪抑制で高信号)として現れ、変形性膝関節症の進行例や半月板損傷後、ストレス骨折の前兆、軟骨下骨壊死など多くの病態で観察されます。骨髄浮腫が広範に存在する症例では、症状の強さや関節破壊の進行と相関するという報告があり、治療方針の重要な参考所見となります。
もうひとつ重要な病態が骨壊死(osteonecrosis)です。大腿骨内顆部の自然発症性骨壊死(SONK)は中高年女性に多く、急性発症の膝痛と特徴的なMRI 所見(軟骨下の骨髄浮腫から半月状の壊死巣形成へ進行)を呈します。原因は不明ですが、軟骨下骨折説や微小血流障害説が提唱されており、進行すると関節面の陥没変形を来すため、保存療法・体外衝撃波治療・人工関節置換術など病期に応じた対応が必要です。
その他、骨髄炎(細菌感染による骨内の炎症)、骨転移、白血病やリンパ腫など血液悪性疾患の骨髄浸潤、ステロイド長期投与に伴う骨壊死、放射線治療後の骨髄置換、なども膝関節周囲の骨髄に病的所見を生じる代表的な病態です。これらは画像検査・血液検査・骨髄穿刺などを組み合わせて鑑別します。
骨髄浮腫と膝関節
骨髄浮腫はMRIのT2強調像やSTIR画像で高信号として観察される所見で、骨内の浮腫・微小骨折・骨壊死などを反映する。変形性膝関節症の症例では大腿骨・脛骨・膝蓋骨に骨髄浮腫が出現することがあり、その存在は痛みの強さ・変形性関節症の進行速度・人工膝関節置換術への移行リスクと有意に関連することが大規模研究で示されている。
骨髄浮腫を伴う膝痛は通常の保存療法で改善しにくいことがあり、近年は骨髄由来の幹細胞(BMAC: 骨髄濃縮液注射)を関節内・骨内に注入する再生医療が研究段階にある。また、特発性骨壊死(SONK: spontaneous osteonecrosis of the knee)は中高年女性で発症する膝の骨壊死で、骨髄浮腫がMRIの初期サインとなる。早期診断と荷重制限が予後を大きく左右する。
骨髄に関するよくある質問
QMRIで骨髄浮腫があると言われましたが何が原因ですか?
変形性膝関節症の進行、半月板損傷、軟骨下骨折、ストレス骨折、骨壊死の前兆など多くの可能性があります。骨髄浮腫そのものは病名ではなく所見なので、症状や他の画像所見と総合して原因を特定し、適切な治療方針を決める必要があります。
Q骨髄浮腫がある膝痛はどう治療しますか?
原因疾患により異なります。変形性膝関節症の急性増悪では運動療法・体重管理・ヒアルロン酸注射などの保存療法が中心、骨壊死では病期に応じて荷重制限・体外衝撃波治療・人工関節置換術などが選ばれます。痛みのコントロールも重要です。
Q骨壊死は手術しないと治りませんか?
早期で壊死巣が小さければ保存療法(荷重制限・薬物療法)と体外衝撃波治療で関節温存できる可能性があります。ただし軟骨下骨折を伴う進行期では人工膝関節置換術や骨切り術などの手術が必要になることが多いです。MRI による病期評価が治療選択の鍵です。
Q骨髄の病気は血液検査だけで分かりますか?
白血病やリンパ腫など血液系疾患では血液検査で異常が示唆されますが、確定診断には骨髄穿刺・生検が必要です。膝周囲の局所的な骨髄病変はMRIや必要に応じてCT・骨シンチが用いられ、悪性腫瘍が疑われれば組織検査が行われます。
参考文献・出典
- [1]
- [2]
- [3]Bone marrow edema in osteoarthritis: a clinical review- PubMed - Osteoarthritis and Cartilage
変形性膝関節症における骨髄浮腫所見の臨床的意義に関するレビュー
- [4]
執筆者
ひざ日和編集部
編集部
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