大腿骨
人体最長の骨で、股関節と膝関節をつなぐ太ももの骨。膝関節では下端の内顆・外顆・滑車溝が関節面を形成する。
大腿骨とは
大腿骨(だいたいこつ、英: femur)とは、人体で最も長く強靭な骨で、股関節と膝関節を結ぶ太ももの中心となる骨です。膝関節では下端が内側顆、外側顆、そして前面の滑車溝という3つの関節面を形成し、脛骨上端と膝蓋骨に対して体重を伝達します。骨幹部の骨折は交通事故などの強い外力でしか起きませんが、頚部や遠位端は高齢者の転倒で骨折しやすく、寝たきりや長期療養の主要な原因となるため、骨粗鬆症対策と転倒予防が重要視されます。
目次
大腿骨の解剖と機能
大腿骨は近位端、骨幹部、遠位端の3部分から構成されます。近位端には大腿骨頭、頚部、大転子、小転子があり、寛骨臼と関節を形成して股関節を作ります。骨幹部は人体最強の長管骨で、強い垂直方向の荷重と捻りに耐えられる構造をもちます。遠位端は内側顆(medial condyle)と外側顆(lateral condyle)という2つの隆起と、その間の顆間窩(intercondylar fossa)、そして膝蓋骨と関節を形成する前面の滑車溝(trochlear groove)で構成されます。
膝関節において、大腿骨遠位端の内側顆と外側顆はそれぞれ脛骨上端の関節面と接して体重を分担します。健常な膝では大腿脛骨角(FTA: femorotibial angle)と呼ばれる解剖学的角度がほぼ176〜178度に保たれ、内側荷重と外側荷重がバランスを取っています。加齢、肥満、内反膝(O脚)などで内側に荷重が偏ると、内側顆の軟骨が摩耗し変形性膝関節症の進行へとつながります。
前面の滑車溝は膝蓋骨の運動軌道を導くレールの役割を持ち、形状の浅さ(trochlear dysplasia)は膝蓋骨脱臼の最大のリスク因子となります。顆間窩には前十字靭帯と後十字靭帯の大腿骨付着部があり、外側顆内側面と内側顆外側面にそれぞれ位置しています。
大腿骨の主な疾患と治療
高齢者では大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折・転子部骨折)が極めて重要な疾患です。骨粗鬆症の高齢者が転倒した際に好発し、年間日本国内で約20万件の発症が報告されています。手術せずに長期臥床すると認知機能低下、肺炎、深部静脈血栓症などの合併症が発生するため、可能な限り早期手術と早期離床が標準治療となっています。骨折型に応じて骨接合術または人工骨頭置換術が選択されます。
膝関節領域では、変形性膝関節症が大腿骨遠位端の軟骨摩耗と密接に関わります。内反変形が進むと内側顆の軟骨が選択的に摩耗し、関節裂隙の狭小化、骨棘形成、軟骨下骨の硬化が進みます。骨切り術(HTO: 高位脛骨骨切り術、DFO: 大腿骨骨切り術)は骨軸を矯正することで荷重分布を変え、軟骨負担を軽減する関節温存手術として、活動性の高い若年層に選択されます。
重度の変形性膝関節症では人工膝関節置換術(TKA)または人工単顆置換術(UKA)が選択され、いずれも大腿骨側のインプラントが術後の膝関節運動を大きく左右します。大腿骨遠位端の骨折(顆部骨折・顆上骨折)は交通事故や高エネルギー外傷で発生し、関節面の整合性を維持した内固定が原則です。膝蓋骨脱臼の根本治療として大腿骨滑車溝の形成術(trochleoplasty)が選択されることもあります。
大腿骨の膝関節における役割
大腿骨遠位端の内側顆と外側顆は、それぞれ脛骨上端の関節面と接して荷重を分担する。健常な膝では大腿脛骨角(FTA)と呼ばれる解剖学的角度がほぼ176〜178度に保たれ、内側荷重と外側荷重がバランスする。加齢や肥満、内反膝(O脚)などで内側に荷重が偏ると内側顆の軟骨が摩耗し、変形性膝関節症の進行へとつながる。
前面の滑車溝は膝蓋骨の軌道を導く役割を持ち、形状の浅さは膝蓋骨脱臼のリスク因子となる。骨切り術(HTOやDFO)は変形性膝関節症で内反・外反変形がある症例に対して、大腿骨や脛骨の骨軸を矯正することで荷重分布を変えて軟骨負担を軽減する手術である。人工膝関節置換術(TKA・UKA)でも大腿骨側のインプラント設計が術後の膝の動きを大きく左右する。
大腿骨によくある質問
Q大腿骨頚部骨折はなぜ高齢者に多いのですか?
加齢に伴う骨粗鬆症で大腿骨頚部の骨密度が低下し、軽い転倒でも骨折しやすくなるためです。閉経後の女性は特にリスクが高く、骨密度測定とビタミンD・カルシウム摂取、骨粗鬆症治療薬の使用が予防の柱となります。転倒予防のための筋力強化と環境整備も重要です。
Q大腿骨頚部骨折の手術はすぐ受けるべきですか?
はい、可能な限り早期(受傷後48時間以内)の手術が推奨されています。手術せずに長期臥床すると肺炎、認知機能低下、深部静脈血栓症などの合併症リスクが大幅に増えるため、早期手術と早期離床が長期予後を大きく改善します。
QO脚は大腿骨の問題ですか?
O脚(内反膝)は大腿骨と脛骨の両方に関連しますが、変形の主体は脛骨側にあることが多いです。ただし大腿骨遠位端の形状や骨幹部の彎曲も影響することがあり、立位X線で大腿脛骨角(FTA)を測定して原因部位を特定します。
Q大腿骨骨切り術(DFO)はどんな場合に行いますか?
外反膝(X脚)変形による外側区画の変形性膝関節症や、膝蓋骨脱臼で大腿骨側の異常が主体の症例で選択されます。大腿骨遠位端の楔状骨切りで膝の力学軸を内側に移動させ、外側軟骨の負担を減らします。比較的若年で活動性が高い症例で関節温存を目指す場合に有効です。
参考文献・出典
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執筆者
ひざ日和編集部
編集部
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