膝軟骨再生の最新臨床試験動向2026|iPS細胞・培養軟骨・遺伝子治療の進捗
京大CiRAのiPS細胞軟骨、自家培養軟骨ジャック1,900例超、AAV遺伝子治療GNSC-001、韓国TG-C Phase3など、2025-2026年の膝軟骨再生医療の最新臨床試験動向を一次ソースベースで解説。
この記事のポイント
2026年4月現在、膝の軟骨を再生する治療で一番進んでいるのは「自家培養軟骨ジャック」です。自分の軟骨を培養して移植する治療で、国内で1,900例を超える実績があります。2024年には治験も終わりました。
続いて研究が進んでいるのが以下の3つです。
- 京都大学のiPS細胞(どんな細胞にも変化できる万能細胞)を使った軟骨移植
- アメリカで開発中の遺伝子治療「GNSC-001」
- 韓国で開発中の細胞・遺伝子治療「TG-C」
ただし、これらの多くはまだ試験の途中です。保険で広く受けられる再生医療は、今のところ限られています。
目次
「膝の軟骨は一度すり減ると元には戻らない」。長年そう言われてきた常識が、少しずつ変わり始めています。再生医療の研究が進んでいるからです。
2025年から2026年にかけて、いくつかの新しい治療が臨床試験の後期段階(実用化の手前)に入ってきました。たとえば以下のような技術です。
- iPS細胞(どんな細胞にも変化できる万能細胞)からつくる軟骨
- 自分の軟骨を培養して移植する「ジャック」の保険適用拡大
- AAVベクター(遺伝子を細胞に届ける運搬役)を使った遺伝子治療
この記事では、信頼できる公的機関の情報をもとに、2025〜2026年に進行中の主な膝軟骨再生医療をまとめました。参考にしたのは、日本再生医療学会、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、臨床試験の登録情報、PMDA(医薬品医療機器総合機構)、アメリカ食品医薬品局(FDA)などの公開情報です。宣伝記事ではありません。「今どこまで進んでいるのか」「いつから一般的な治療として受けられそうか」を、事実に基づいてお伝えします。
膝の痛みに悩む方やご家族が、過度な期待や失望をせず、冷静に状況を知るための参考になれば幸いです。
【1】京都大学によるiPS細胞を使った軟骨移植の臨床研究
iPS細胞(どんな細胞にも変化できる万能細胞)を使った膝軟骨再生で、日本をリードしているのが京都大学です。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と京都大学医学部附属病院が連携して研究を進めています。2019年11月には厚生労働大臣へ計画を提出し、安全性の基準を満たすと確認されました。
対象となるのは、けがや「離断性骨軟骨炎」などによる膝の軟骨損傷です。他の人のiPS細胞からつくった軟骨組織を、患者さんの欠けた部分に移植する方法です。2023年2月には、サル(カニクイザル)を使った研究で成果が出ました。他の人のiPS細胞からつくった軟骨を膝に移植すると、正常な軟骨に近い組織として再生することが論文で報告されました。
さらに2023年6月には、質の高い軟骨を大量につくる新しい方法も確立しています。治療に必要な「量」と「品質」の両方の基盤が整いつつあります。
ただ、2025〜2026年の時点では、まだ初期段階の研究にとどまっています。海外の専門誌のレビューでも、iPS細胞由来の軟骨は「動物実験から初期臨床」の段階と報告されています。実用化までには、製造のしくみ・品質管理・長期の安全性の確認に、あと数年以上かかると見られます。
【2】自家培養軟骨ジャック:1,900例超の実績と適応拡大

今、日本で一番実用化が進んでいる膝の再生医療が「自家培養軟骨ジャック」です。株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)が開発した製品で、以下のような治療法です。
- 患者さん本人の健康な軟骨を少量採取する
- 体の外で立体的に培養する
- 膝の軟骨が欠けた部分に移植する
2012年に国内で承認されました。これまでは主にけがや離断性骨軟骨炎が対象でしたが、変形性膝関節症(膝OA)にも使えるように適応が広がってきています。2026年2月のJ-TEC畠賢一郎氏の講演資料によると、ジャックはこれまでに1,900例以上の治療実績があります。発売後7年間の調査でも、有効性と安全性が確認されています。
変形性膝関節症を対象とした治験は、2018年7月に始まり、2024年2月にPMDAへ治験終了が届け出られました。この治験では、以下のような結果が報告されています。
- ヒアルロン酸注射と比べて膝の機能(WOMACスコア)が有意に改善
- 移植した部位の97.4%で、正常な軟骨に近い組織に修復
さらに、2025年3月26日には一部変更が承認されました。2026年1月の朝日新聞では「自分の軟骨細胞を培養して移植する再生医療製品が変形性膝関節症にも保険適用」と紹介されています。一方で、ジャックは膝を大きく切り開く手術が必要です。使えるのは、日本整形外科学会が定める基準を満たした医療機関だけです。
「人工関節を避けて膝そのものを治す」選択肢が現実になりつつあります。ただし、高齢・変形が進んでいる・肥満などの場合は適応外となることも多く、誰でも受けられるわけではありません。
【3】遺伝子治療:GNSC-001とTG-Cの動向

最近、急速に開発が進んでいるのが、膝の関節に遺伝子を届ける治療です。使うのはAAVベクター(遺伝子を細胞に届ける運搬役)と呼ばれるしくみです。JST研究開発戦略センターの2026年報告書でも、この治療は血友病や筋ジストロフィーなどではすでに実用化されており、次は変形性関節症(OA)への応用が注目分野と挙げられています。
代表的なのが、アメリカで開発中の遺伝子治療「GNSC-001」(Genascence社)です。炎症を抑える物質を関節の中で長く出し続けるしくみです。この治療は、以下のように順調に進んでいます。
- 第1段階の試験で、安全性と効果の持続が確認済み
- 2024年にアメリカで早期承認を目指す「Fast Track指定」
- 2025年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)から画期的な治療法として認定
- 2026年以降に臨床試験の後期段階(実用化の手前)へ進む計画
関節に直接注射する方法のため、全身に投与するタイプで心配される副作用のリスクは低いと考えられています。OA領域で最も実用化に近い遺伝子治療のひとつです。
もうひとつ注目されているのが、韓国で開発中の細胞・遺伝子治療「TG-C」(Kolon TissueGene社)です。膝OA向けの世界初クラスの治療を目指しています。2つの後期試験で患者さんへの投与が完了しました。今後2年間経過を追い、2027年までにアメリカでの認可を目指しているとKolon社は発表しています。
15年以上の長期安全性データの一部は、2025年の世界学会で発表されました。日本国内でも、湘南鎌倉総合病院が2026年2月から、エクソソーム(細胞外小胞)を使った変形性膝関節症の臨床研究を国内で初めて開始しています。遺伝子や細胞を使った膝治療の選択肢は、確実に広がってきています。
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【4】海外の臨床試験の動向:アメリカ・ヨーロッパと韓国CARTISTEM
海外でも、膝の軟骨を再生するための細胞治療や遺伝子治療の臨床試験が、いくつも進行中です。アメリカ食品医薬品局(FDA)やヨーロッパの規制当局(EMA)のもとで行われています。2025年2月には、アメリカのメイヨークリニックが膝OA向け遺伝子治療の第1段階試験を始めたと発表しました。関節に直接注射する方法の安全性を確認しています。
これらの臨床試験の情報は、公的な登録サイト(clinicaltrials.govやjRCT)で公開されています。試験の目的や参加条件も確認できます。患者さん自身が「科学的にきちんとした治療」と「未承認の自由診療」を見分ける手がかりになります。
韓国Medipost社の「CARTISTEM」も注目されています。以下のような特徴があります。
- 赤ちゃんのへその緒(臍帯血)から採れる幹細胞を使う
- ヒアルロン酸と組み合わせた製品
- 韓国ではすでに承認・販売中
2026年2月の報道によると、アメリカでの臨床試験も認可されました。2026年2月から、アメリカとカナダで後期試験が始まる予定です。軟骨再生を伴う「病気そのものを修正する治療薬」を目指しています。ヨーロッパでは、スイスのバーゼル大学が主導する「鼻の軟骨を使った膝の軟骨再生」の試験なども進行中です。
ただし、海外の複数のレビューでも、こう明記されています。「2026年4月時点で、アメリカFDAもヨーロッパEMAも、iPS細胞や遺伝子治療による膝軟骨再生を正式には承認していない」。SNSや一部のクリニックで宣伝される「幹細胞注射で軟骨が再生する」という治療の多くは、FDAやEMAが効果を認めたものではありません。自由診療の費用と、効果の裏付けを冷静に見極める必要があります。
【独自分析】いつから一般的な治療として受けられそうか
これまでの情報を整理すると、膝の再生医療は2026年4月時点で、大きく3つの段階に分けられます。
- すでに受けられる治療
- 2027〜2030年ごろに実用化が見込まれる治療
- 2030年以降を見据えた研究段階
すでに受けられる治療
自家培養軟骨ジャックです。基準を満たす整形外科で、保険診療として受けられます。対象は主にけがや離断性骨軟骨炎ですが、変形性膝関節症への適応拡大も進行中です。2024年に治験が終わり、2025年に一部変更の承認も受けました。
2027〜2030年ごろに実用化が見込まれる治療
以下の2つです。
- 韓国Kolon社のTG-C(2027年までにアメリカでの認可を目指している)
- アメリカGenascence社のGNSC-001(臨床試験の後期段階に進行予定)
どちらも、日本で保険適用になるにはさらに数年かかります。国内で受けられるのは、早くても2028年以降と予想されます。
2030年以降を見据えた研究段階
以下の技術です。
- 京都大学CiRAのiPS細胞由来軟骨
- エクソソーム治療
- 鼻軟骨を使った軟骨細胞移植
基盤技術は進んでいますが、保険診療になるには、製造コスト・品質保証・長期の安全性の3点で追加の検証が必要です。
患者さんが押さえておくべきこと
「あと数年で再生医療がすべて解決してくれる」と期待しすぎるのも、「再生医療は自分には関係ない」と諦めるのも、どちらも現実と違います。主治医と相談するときは、次の3点を順に考えると良いでしょう。
- 運動療法・体重管理・薬物療法など、基本の保存療法をきちんと行っているか
- ジャックなど既に承認された再生医療の条件を満たしているか
- 公的に登録された臨床試験(jRCT/clinicaltrials.gov)に参加できるか
自由診療の幹細胞注射に数百万円を使う前に、この順番で考えることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
よくある質問(FAQ)
Q1. iPS細胞を使った膝軟骨再生は、いつから受けられますか?
2026年4月時点では、保険診療として一般の方が受けることはできません。日本でも海外でも同じ状況です。京都大学CiRAと京都大学医学部附属病院が、臨床研究として進めている段階です。対象となる病気や人数も限られています。
実用化には、製造コストを下げたり、長期の安全性データを集めたりといった課題があります。保険で受けられるようになるのは、2030年以降になる可能性が高いと考えられます。
Q2. 自家培養軟骨ジャックは、どんな人が受けられますか?
主な対象は、けがや離断性骨軟骨炎などによる、比較的狭い範囲の軟骨欠損です。次のような場合は、慎重に判断する必要があります。
- 変形性膝関節症が進行している
- 軟骨の欠けている範囲が広い
- 高齢
- BMI(体格指数)が高い
2024年に治験が終わり、2025年に一部変更が承認されたことで、変形性膝関節症への適応拡大も進んでいます。治療を受けるには、学会が指定した基準を満たす整形外科が必要です。まずは主治医に相談し、受けられる医療機関を紹介してもらうのが現実的です。
Q3. 自由診療の「幹細胞注射」も、膝軟骨再生と同じですか?
別物と考えたほうが安全です。FDAや厚労省が承認している再生医療は、製造工程・品質管理・臨床試験データが公開・審査されたものに限られます。自由診療クリニックで行われる幹細胞注射の多くは、こうした承認を受けていません。効果の裏付けが不十分なまま、数百万円規模の高額料金で提供されるケースがあります。
受ける前に、以下の3点を確認することをおすすめします。
- 厚生局に提出された「再生医療等提供計画」があるか
- 公的な臨床試験登録(jRCT)があるか
- 効果に関する、専門家の審査を通った論文があるか
参考文献・出典
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]
- [6]
- [7]NCT05835895: Gene Therapy for Knee Osteoarthritis (GNSC-001)- U.S. National Library of Medicine / Genascence
AAV-IL-1RaによるOA遺伝子治療のPhase 1登録情報
- [8]Kolon TissueGene Completes Patient Dosing in Two Pivotal US Phase 3 Trials for TG-C- PRNewswire / Kolon TissueGene
膝OA向け細胞・遺伝子治療TG-CのUS Phase 3試験の投与完了発表
- [9]
- [10]
軟骨再生医療の実用化はまだ発展途上で、多くの膝痛の方にとって現時点での選択肢は運動療法・体重管理・薬物療法などの保存療法と、日々のセルフケアが中心です。体の内側から関節軟骨成分を補う選択肢として機能性表示食品のサプリメントを検討する方も増えており、hiza-biyoriでは消費者庁の機能性表示食品の届出データを基準に、膝サプリを成分・価格・エビデンスの観点からランキング形式で比較しています。再生医療を含む医療的治療は必ず医師と相談のうえ決定してください。本記事の内容は2026年4月時点の公開情報に基づくもので、診療行為や特定製品の効能を保証するものではありません。
まとめ
2025〜2026年の膝軟骨再生医療は、「研究室の夢物語」から「現実の治療選択肢」へと、確実に前進しています。現時点での主な動きは以下のとおりです。
- 自家培養軟骨ジャック:国内1,900例超の実績。変形性膝関節症への適応拡大も進行中
- 韓国TG-C:2027年までにアメリカでの認可を目指して、追跡調査が進行中
- アメリカGNSC-001:FDAから画期的な治療法として認定を獲得
- 京都大学CiRAのiPS細胞軟骨:サルを使った研究で再生を実証
一方、2026年4月の時点で、アメリカFDAもヨーロッパEMAも、iPS細胞や遺伝子治療による膝軟骨再生は正式に承認していません。一般の患者さんが保険診療で受けられるようになるのは、早くても2028年以降と見込まれます。当面は、運動療法・体重管理・薬物療法などの保存療法が中心となります。
主治医と相談しながら、条件に合う方はジャックや登録された臨床試験を検討するのが、最も現実的な選択です。自由診療の幹細胞注射には慎重になりましょう。必ず、再生医療等提供計画や査読付き論文があるかを確認してから判断してください。
膝の健康は、一足飛びには良くなりません。日々の積み重ねと最新医療のバランスのなかで、少しずつ守られていくものです。
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