腓骨
すねの外側にある細い骨。膝関節では腓骨頭が外側側副靭帯の付着部となり、膝の側方安定化に関与する。
腓骨とは
腓骨(ひこつ、英: fibula)とは、すねの外側にある細長い骨です。脛骨とは異なり荷重の役割はほとんど担わず、下肢の総荷重のおよそ10パーセント程度しか伝達しません。膝関節では上端の腓骨頭が外側側副靭帯(LCL)と大腿二頭筋腱の付着部として機能し、足関節では下端の外果が距骨を外側から支える役割を担います。膝の側方安定性に関わる重要な構造であり、腓骨頭近傍を走行する腓骨神経の損傷は下垂足の原因として臨床上見逃せない病態です。
目次
腓骨の解剖と機能
腓骨は下腿の外側に位置する細長い骨で、上端の腓骨頭、中央の骨幹部、下端の外果から構成されます。上端の腓骨頭は脛骨外側顆の後外下方に位置し、脛腓関節(superior tibiofibular joint)として脛骨と関節を形成しています。下端の外果は脛骨下端の内果とともに足関節の関節面を構成し、距骨をしっかりと挟み込む構造を作っています。骨幹部は脛骨と骨間膜(interosseous membrane)で連結されています。
機能的には、腓骨は荷重伝達よりも筋付着部と関節安定化に大きな役割を果たします。腓骨頭には外側側副靭帯(LCL)、大腿二頭筋腱、後外側支持機構の構成要素が集合して付着し、膝の後外側安定性を担う重要な合流点となっています。骨幹部にはヒラメ筋、長腓骨筋、短腓骨筋、長母趾屈筋などが付着し、足関節の運動に関与します。下端の外果は足関節の外側支持を担い、足関節捻挫で損傷を受けやすい部位です。
腓骨頚部の直下を総腓骨神経が浅く走行しているため、神経損傷の好発部位として臨床上極めて重要な解剖学的特徴をもちます。膝外側からの直達外力、腓骨頚部骨折、長時間の足組みやギプスでの圧迫などで容易に神経麻痺を起こすことが知られています。
腓骨の損傷と腓骨神経麻痺
膝関節外側から強い外力を受けると、腓骨頭の剥離骨折や腓骨頚部の骨折を来すことがあります。腓骨頭には外側側副靭帯、後外側支持機構、大腿二頭筋腱という重要構造が集合して付着しているため、剥離骨折ではこれらの構造が同時に損傷している可能性を強く考慮し、後外側回旋不安定性の評価とMRIによる詳細な検索が必要となります。
腓骨で最も臨床的に重要な合併症は腓骨神経麻痺です。腓骨頚部の直下を総腓骨神経が浅く走行しているため、腓骨頚部骨折、膝外側からの直達外力、長時間の足組み、ギプスやサポーターによる圧迫、変形性膝関節症の高度内反変形などで容易に麻痺が起こります。麻痺すると足首と足趾の背屈ができなくなる「下垂足(drop foot)」を生じ、歩行時につま先が地面に引っかかる「ステッページ歩行」となります。
腓骨周囲の損傷では神経学的所見の確認が必須で、足背の感覚障害と足関節背屈・足趾伸展の筋力低下を見逃さないことが大切です。早期診断と原因除去(圧迫の解除、骨折の整復・固定)で多くは数週間から数ヶ月で回復しますが、長期化する場合は神経電気生理検査と神経外科的処置が検討されます。腓骨単独の骨幹部骨折は比較的稀で、多くは脛骨骨折や足関節捻挫に伴って発生します。
腓骨の役割と臨床的意義
腓骨は脛骨に比べて細く、骨幹部はわずかな荷重伝達と筋付着の役割を持つ。上端の腓骨頭は外側側副靭帯・後外側支持機構・大腿二頭筋腱が付着する重要な合流点で、膝の後外側安定性を担う。受傷で腓骨頭が剥離骨折すると、これらの構造が同時に損傷している可能性を考えるべきである。
腓骨頭の直下を腓骨神経(総腓骨神経)が浅く走行しているため、腓骨頚部骨折・膝外側からの直達外力・長時間の足組み・ギプス圧迫などで神経麻痺を起こしやすい。麻痺すると足首と足趾の背屈ができなくなる「下垂足」となり、歩行障害の原因となるため、腓骨周囲の損傷では神経学的所見の確認が必須である。
腓骨によくある質問
Q腓骨は折れても歩けますか?
腓骨は荷重をほとんど担わないため、骨幹部の単独骨折であれば固定下に部分荷重歩行が可能なことがあります。ただし腓骨頭や腓骨頚部の骨折では膝外側支持機構や腓骨神経が損傷している可能性があり、安易な歩行は避けるべきです。整形外科での評価が必要です。
Q腓骨神経麻痺の症状は?
足首が背屈できない(つま先が上がらない)、足趾の伸展ができない、足背と下腿外側の感覚が鈍くなるのが代表的症状です。歩行時につま先が引っかかってつまずきやすくなる「下垂足」が特徴的で、原因の早期特定と圧迫解除が重要となります。
Q足を組むと腓骨神経麻痺になりますか?
長時間の足組みで上にした足の腓骨頚部が圧迫されると神経麻痺を起こすことがあります。短時間なら問題ありませんが、しびれを感じたら姿勢を変えることが予防になります。手術後のギプスやサポーターでも腓骨頚部周囲の圧迫には注意が必要です。
Q腓骨は手術で取り除いても大丈夫ですか?
骨腫瘍や脛骨再建のドナー骨として腓骨の一部または全長が摘出されることがあります。荷重には大きな影響はありませんが、上端と下端の関節構造を残すこと、神経・血管温存に細心の注意が払われます。整形外科や形成外科での手術計画が重要です。
参考文献・出典
- [1]Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb, Fibula- StatPearls / NCBI Bookshelf
腓骨の解剖・血管支配・臨床的意義に関する英語医学レビュー
- [2]
- [3]
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執筆者
ひざ日和編集部
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