前十字靭帯
膝関節の中央で大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯。スポーツで断裂しやすく、再建手術の対象となる代表的な膝靭帯。
ポイント
前十字靭帯とは
前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい、英: anterior cruciate ligament、ACL)は、膝関節の中央で大腿骨と脛骨を結ぶ2本の十字靭帯のうち前方を走行する靭帯。脛骨が前方や内側へずれるのを防ぎ、膝の回旋安定性を担う。スポーツでの非接触型受傷で断裂が起きやすく、若年女性のアスリートで特にリスクが高いことが知られている。
前十字靭帯の役割と損傷
前十字靭帯は前内側線維束(AMB)と後外側線維束(PLB)の2本から成り、膝の屈曲角度に応じて互いに緊張を分担する仕組みを持つ。脛骨を前方へ引き出そうとする力に最も強く抵抗し、ジャンプ着地・急停止・方向転換といった動作で大きな負荷を受ける。バスケットボールやサッカー、スキーなどで非接触受傷が多く、受傷時には膝が崩れる感覚や「ポップ音」を自覚することが特徴である。
診断にはLachmanテストと前方引き出しテスト、ピボットシフトテストといった徒手検査とMRIが用いられる。完全断裂は自然治癒が困難なため、活動性の高い若年〜中年層では関節鏡視下の靭帯再建術が標準治療となる。再建には自家腱(半腱様筋腱や膝蓋腱の一部)が広く用いられ、競技復帰には9〜12ヶ月のリハビリテーションが必要となる。
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執筆者
ひざ日和編集部
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