
松山奈未が膝ACL+MCL複合靭帯損傷で手術|女性アスリートの膝ケガと復帰の道
バドミントンパリ五輪銅メダリスト松山奈未選手が左膝の前十字靭帯(ACL)と内側側副靭帯(MCL)の複合損傷で手術・リハビリ中。女性アスリートに多いACL損傷の理由、ACL+MCL複合損傷の特殊性、復帰タイムラインを整形外科医監修レベルで解説します。
ニュースの要点
結論:バドミントン女子混合ダブルスの松山奈未選手(27、再春館製薬所)が、2026年3月末のベトナム国際大会決勝戦で左膝を負傷。帰国後の精密検査で左膝前十字靭帯(ACL)損傷と内側側副靭帯(MCL)損傷の複合損傷と診断され、手術とリハビリに専念することになりました。
- 負傷日:2026年3月29日(ベトナムIC決勝戦中)
- 診断:左膝ACL損傷+MCL損傷(4月6日所属先発表)
- 治療方針:手術+長期リハビリ
- 復帰目安:通常ACL再建術後8〜12か月(個人差あり)
- 女性アスリートのACL損傷率:男性の2〜3倍と報告
本記事では、女性アスリートに膝ACL損傷が多い解剖学的・ホルモン的な理由、ACLとMCLが同時に切れる「複合損傷」の特殊性、そして長期リハビリと復帰までの段階的なタイムラインを、50〜70代の読者にも分かりやすく解説します。
目次
パリ五輪銅メダリストを襲った膝の複合靭帯損傷
2024年パリ五輪のバドミントン女子ダブルスで、志田千陽選手とのペア「シダマツ」として銅メダルを獲得した松山奈未選手。昨秋に混合ダブルスへ転向し、緑川大輝選手との新たな挑戦を始めた矢先のことでした。
2026年3月29日、ベトナムインターナショナルチャレンジ決勝戦の最中に左膝を負傷し、試合を途中棄権。帰国後の精密検査で告げられたのは、左膝前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)損傷と内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)損傷という、二つの靭帯が同時に傷ついた「複合靭帯損傷」でした。
所属の再春館製薬所は4月6日に公式発表を行い、「今後は医師の指導のもと、手術およびリハビリに専念いたします」と説明。松山選手本人もインスタグラムで「乗り越えて、強くなって戻ってきます」と再起への決意を綴っています。
今回のニュースは、単に一人のトップアスリートのケガではありません。女性アスリートに圧倒的に多いACL損傷、そして予後不良のサインとされる複合靭帯損傷という、整形外科スポーツ医学の重要なテーマを社会に投げかけています。本記事では、医学的背景、女性に多い理由、復帰までの道のりを、専門用語をかみ砕いて解説します。
※母親はバルセロナ五輪バドミントン日本代表でタレントの陣内貴美子さん。家族そろってバドミントンに人生を捧げてきた背景も、今回のリハビリに大きな意味を持ちます。
ACL+MCL複合損傷とは|2本の靭帯が同時に切れるケガ
膝の関節は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)、そしてお皿の骨(膝蓋骨)の3つから成り立っています。これらの骨をつなぎ、関節がぐらつかないように支えているのが「靭帯」です。膝には主に4本の靭帯があります。
膝にある4本の靭帯
- 前十字靭帯(ACL:Anterior Cruciate Ligament):膝の中央で大腿骨と脛骨を斜めに結び、すねの骨が前にずれるのを防ぐ。回旋(ねじれ)の制御も担う
- 後十字靭帯(PCL):すねの骨が後ろにずれるのを防ぐ
- 内側側副靭帯(MCL:Medial Collateral Ligament):膝の内側にあり、膝が外側に開く(外反する)のを防ぐ
- 外側側副靭帯(LCL):膝の外側にあり、膝が内側に倒れる(内反する)のを防ぐ
松山選手が損傷したのは、このうちACL(前十字靭帯)とMCL(内側側副靭帯)の2本です。
なぜ2本同時に切れるのか
ACLとMCLが同時に損傷する典型的な機序は、「外反+回旋(ねじれ)」のストレスが膝に加わることです。具体的には、片足で着地したり急停止したりした瞬間に、膝が内側に倒れ込み(ニーイン)、同時にすねの骨がねじれることで、まずMCLが伸びて切れ、続けて中央のACLも断裂するというパターンが知られています。
バドミントンの試合中であれば、シャトルを追って急停止した際や、スマッシュ後のジャンプ着地で踏ん張った瞬間に発生し得る動きです。本人も試合のラリー中に「片足で踏み込んで着地した直後に膝が崩れた」と語っており、典型的な受傷機転と考えられます。
ACL単独損傷であれば手術せずスポーツ復帰を目指すケースもありますが、2本以上の靭帯が同時に切れる「複合損傷」では、関節の不安定性が顕著になるため、原則として手術が選択されます。
複合損傷の症状・診断と「不幸の三徴候」
受傷時の典型的な症状
- 「ブチッ」「ポキッ」という断裂音を本人が聞くことがある
- 受傷直後の激しい痛みと立てなくなる感覚
- 数時間以内に関節内出血による著しい腫れ(関節血腫)
- 歩こうとすると膝が崩れる感覚(giving way、膝崩れ)
- 膝の内側を押すと激痛(MCL損傷部の圧痛)
- 膝を完全に伸ばしたり曲げたりできない可動域制限
診断に使われる検査
| 検査 | 目的 |
|---|---|
| ラックマン(Lachman)テスト | ACL損傷の徒手検査。すねの骨を前に引き出して緩みを見る |
| 前方引き出しテスト | ACL損傷の評価。膝90度屈曲位で前方への動揺をチェック |
| 外反ストレステスト | MCL損傷の評価。膝を外側に開く動きで不安定性を見る |
| マックマレーテスト | 半月板損傷の有無を評価 |
| MRI検査 | 靭帯・半月板・軟骨の損傷を画像で確定診断 |
「不幸の三徴候(Unhappy Triad)」とは
ACL+MCLの複合損傷で必ず確認すべきなのが、内側半月板の損傷の有無です。1950年に米国の整形外科医オドノヒュー(O'Donoghue)が報告した「不幸の三徴候」とは、①ACL断裂、②MCL損傷、③内側半月板損傷の3つが同時に起こる状態を指し、急性スポーツ膝外傷の約25%に見られると報告されています。
近年の関節鏡検査では、内側半月板よりむしろ外側半月板の合併損傷が多いとの報告もあり、定義は議論の途中です。いずれにせよ複合損傷では、半月板や軟骨の同時損傷の有無が予後を大きく左右するため、MRIによる詳細な評価が欠かせません。
現時点では、松山選手の半月板損傷の有無は公表されていませんが、複合損傷である以上、手術前のMRI評価で慎重に確認されているはずです。
ACL単独損傷 vs ACL+MCL複合損傷|治療方針はどう違う?
同じ「ACLが切れた」と一口に言っても、単独損傷か複合損傷かで、手術の進め方やリハビリの順序が大きく変わります。両者を表で整理します。
| 項目 | ACL単独損傷 | ACL+MCL複合損傷(松山選手のケース) |
|---|---|---|
| 頻度 | 膝靭帯損傷で最多 | スポーツ膝外傷の20〜30%程度 |
| 受傷機転 | 非接触のジャンプ着地・急停止 | 外反+回旋ストレス(接触・非接触どちらも) |
| 関節の不安定性 | 前方+回旋方向 | 前方+回旋+外反方向(多方向に不安定) |
| 第一選択治療 | 競技スポーツなら手術(再建術) | 原則手術(保存療法は困難) |
| MCLの治療 | 該当せず | 装具固定で先に保存治療→可動域改善後にACL再建術が一般的 |
| 手術までの期間 | 受傷後2〜6週(腫れが引いてから) | MCLの治癒を待つため4〜8週後が多い |
| 術式 | 関節鏡視下ACL再建術(自家腱移植) | ACL再建術+必要に応じMCL縫合・再建 |
| 競技復帰目安 | 術後8〜12か月 | 術後10〜12か月以上(個人差大) |
| 変形性膝関節症リスク | 未治療で約60% | さらに高くなる傾向 |
なぜMCLは先に保存治療するのか
MCL(内側側副靭帯)は血流が比較的豊富な靭帯のため、装具で固定して安静を保てば1〜3か月程度で治癒する性質があります。一方ACL(前十字靭帯)は関節内の靭帯で血流に乏しく、自然治癒は望めません。
そのため複合損傷では、まずMCLを装具で保存的に治しながら、関節の腫れと可動域を整え、その後にACL再建術を行うのが標準的な流れです。松山選手も4月22日時点でまだ松葉杖姿の動画をInstagramに投稿しており、現在はこの「術前期」にあたる可能性が高いと考えられます。
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女性アスリートのACL損傷率が男性の2〜3倍である理由
ACL損傷は性差が極めて大きい外傷として知られ、同じ競技を同じ強度で行っても、女性は男性の2〜3倍受傷しやすいと多数の研究が報告しています。バスケットボールやサッカーでは6〜8倍とのデータもあります。理由は単一ではなく、解剖学・ホルモン・神経筋制御の3つの要素が複合的に絡んでいます。
1. 解剖学的な要因
- Q角(キューかく)が大きい:骨盤から膝蓋骨を通って脛骨へ向かう角度のこと。男性が約14度に対し、女性は約17度と大きい。Q角が大きいほど、太ももの筋力が膝を内側へ引っ張る力が強くなる
- 骨盤幅が広い:解剖学的に出産に適した骨盤構造のため、大腿骨が内側に傾きやすく、膝が「く」の字(外反位)になりやすい
- ACL自体が細い:女性のACLは男性より平均で約1〜2mm細く、強度も低いと報告
- 大腿骨の顆間窩(かかんか)が狭い:ACLが通る骨のトンネルが狭く、ぶつかりやすい
2. ホルモン的な要因
- 女性ホルモン(エストロゲン)の影響:エストロゲンには靭帯の「緩み」を増す作用があり、月経周期の中で関節弛緩性が変動する
- 排卵期前後でACL損傷リスクが高まると複数の研究が指摘
- 近年は経口避妊薬の使用とACL損傷率の関係も研究対象に
3. 神経筋制御の要因
- 大腿四頭筋優位:女性は太ももの前側(大腿四頭筋)の力に頼り、後側(ハムストリングス)が相対的に弱い。前側の筋肉はすねの骨を前に引き出す働きがあり、ACLへの負担が大きい
- ジャンプ着地で膝が内側に入りやすい(knee-in toe-out):体幹のブレが下肢に伝わりやすく、膝の外反が起きやすい
- 股関節周りの筋力が相対的に弱い:体幹・骨盤の安定性低下が膝への負担を増やす
バドミントン選手特有の負荷
バドミントンは「ラケット競技の中で最も瞬発系」と言われ、1試合中に何百回も急停止・急加速・急方向転換・ジャンプ着地を繰り返します。特にスマッシュ後の片脚着地、ネット前のシャトルへの飛び込み停止、シャトルを追う際の踏み込みは、ACLに高い外反・回旋ストレスを加えます。
大原女子バドミントン選手を対象とした研究では、ジャンプ着地時の膝外転角度の増加とACL損傷リスクの関連が報告されており、競技特性と女性アスリートの解剖学的不利が掛け合わさって受傷リスクを押し上げていると考えられます。
複合損傷の手術と段階的リハビリ|術前から競技復帰までの流れ
ACL+MCL複合損傷の治療は、長期にわたる「マラソン」と例えられます。一般的な競技スポーツ復帰までの工程を、時期別に整理します。
術前期(受傷直後〜手術まで/2〜8週間)
- RICE処置:安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)で炎症を抑える
- 装具装着+松葉杖歩行:MCLの治癒を促し、膝の不安定性から関節を守る
- 関節可動域訓練:膝が固まらないよう、痛みのない範囲で曲げ伸ばし
- 大腿四頭筋セッティング:太ももに力を入れる訓練で筋萎縮を防ぐ
- プレハビリ:手術前にできる体力・筋力の維持。術後の回復速度を左右する
松山選手が4月12日のInstagramで「まだ痛み止めがないと眠れない」と発信していたのは、まさにこの術前期にあたると考えられます。痛みが強い時期にも筋萎縮を防ぐ訓練が始まっています。
手術(術前期の終わり)
- 関節鏡視下ACL再建術が標準。膝に小さな穴を開けて内視鏡で行う
- 移植腱にはハムストリング腱(半腱様筋・薄筋)または膝蓋腱を自分の体から採取(自家腱移植)
- 大腿骨と脛骨にトンネルを作り、加工した腱を通して固定
- MCLは新鮮例なら多くは保存治療で治っているが、不安定性が残れば縫合・再建を追加
- 半月板損傷があれば、可能な限り縫合(切除より将来の関節症リスクが低い)
術後期(手術直後〜6か月)
| 時期 | 主な目標 |
|---|---|
| 術後0〜2週 | 装具固定、松葉杖、可動域訓練開始(屈曲90度まで) |
| 術後2〜6週 | 全荷重歩行へ移行、可動域120度を目標 |
| 術後6週〜3か月 | 装具離脱、自転車エルゴメーター、軽い筋力訓練 |
| 術後3〜4か月 | ジョギング開始、スクワットなど本格的筋力訓練 |
| 術後4〜6か月 | ジャンプ・アジリティトレーニング開始 |
復帰期(術後6〜12か月)
- 術後6か月:ノンコンタクト練習、競技動作の再習得
- 術後8か月:ノンコンタクトスポーツへの段階的復帰
- 術後10〜12か月:実戦復帰の可否を、筋力測定(Biodexなど)・膝の安定性検査・パフォーマンステストで総合判定
順天堂大学整形外科スポーツ診療科の高澤祐治教授は「日本代表選手であってもACL再建術によって日本代表選手に復帰することは可能だが、それにはリハビリ期に合わせた適切なリハビリテーションが不可欠」と述べています。手術の点数は50点、残り50点はリハビリで決まるという言葉は、ACL外傷治療の本質を表しています。
松山選手の場合、ベトナムIC負傷から競技復帰までは順調にいっても2026年末〜2027年春以降になると見込まれます。
独自分析|松山選手の発信から学ぶリハビリのメンタル
ACL再建術後のリハビリは8〜12か月にも及ぶ長期戦です。身体的なつらさ以上に、選手のキャリアを左右するのがメンタルマネジメントです。松山選手のSNS発信は、まさにこの心理的側面の重要性を教えてくれます。
SNS発信の3つのフェーズ
- 4月12日「まだ痛み止めがないと眠れない」:受傷直後の率直な痛みの告白。本人にとっては感情の言語化、ファンにとってはアスリートの人間的な側面に触れる機会
- 4月15日「焦らず前向きに」:自分自身への言い聞かせと、応援への返答。リハビリ初期で陥りがちな「早く戻りたい焦り」を意識的にコントロール
- 4月22日「松葉杖姿の動画」:現状を隠さず見せることで、回復過程そのものを共有。同じ膝のケガに苦しむアスリートやファンへのエンパワーメント
母・陣内貴美子さんという存在
松山選手の母親は、バルセロナ五輪バドミントン日本代表で、現在はタレントとして活躍する陣内貴美子さんです。トップ選手としての厳しさも、引退後のキャリア構築も間近で見てきた家族の存在は、長期リハビリ中の精神的支柱として極めて大きいと考えられます。
「アスリートが膝のケガをしたとき、最も孤独になるのは練習場から離れた時間」とスポーツ心理学では言われます。家族・チームメイト・トレーナーとの繋がりを保つこと、そしてSNSなどで外の世界との接点を維持することは、抑うつ症状の予防に直接寄与します。
50〜70代の読者への示唆
「アスリートの話は自分には関係ない」と思われるかもしれません。しかし、ACL損傷は中高年でも階段の踏み外しや転倒で起こり得ますし、何より長期リハビリにおける焦りや諦めとの付き合い方は、変形性膝関節症の運動療法やTKA(人工膝関節置換術)後のリハビリにも共通します。
- 痛みは隠さず、医療者・家族に正直に伝える
- 回復のスピードは個人差が大きい。他人と比べない
- 1日の小さな進歩を記録する(可動域が5度増えた、痛み止めの量が減った等)
- 同じ経験をした仲間とつながる
松山選手の発信スタイルは、世代を問わず膝のリハビリに取り組む全ての人にとって、参考になる「お手本」と言えるでしょう。
編集部の視点
本サイトでは昨日(4月23日)、サッカー日本代表DF町田浩樹選手のACL断裂・術後復帰のニュースも取り上げました。バドミントンとサッカー、競技は違ってもACLという同じ靭帯、そして同じ8〜12か月の長期リハビリが立ちはだかります。アスリートの膝靭帯損傷の頻発は、競技レベルでの予防プログラム(FIFA11+やPEP programなど)の重要性を改めて示唆しています。
よくある質問(FAQ)
よくある質問(FAQ)
Q1. 松山奈未選手は完全に元のレベルに戻れますか?
個別の予後を医師でない第三者が断言することはできません。一般論として、ACL再建術を受けたトップアスリートが日本代表レベルに復帰する例は多数あり、適切なリハビリと再受傷予防プログラムによって元の競技力に戻れる可能性は十分にあります。ただし「必ず治る」と断定はできず、復帰時期は個人差が極めて大きいのが実情です。
Q2. ACLが切れたら必ず手術が必要ですか?
競技スポーツへの復帰を目指すなら原則として手術(再建術)が推奨されます。日常生活レベルなら保存療法も選択肢ですが、手術をしない場合、長期的には約6割の方が変形性膝関節症に進行するとの報告があります。複合損傷では関節の不安定性が顕著なため、手術がより強く推奨されます。
Q3. なぜ女性アスリートにACL損傷が多いのですか?
主な要因は3つです。①Q角が大きい・骨盤幅が広いなどの解剖学的特徴、②女性ホルモン(エストロゲン)による靭帯の緩み、③大腿四頭筋優位で着地時に膝が内側に入りやすい神経筋制御の違い。これらが組み合わさって、男性の2〜3倍(競技によっては6〜8倍)の受傷率となっています。
Q4. ACL再建術後、競技復帰までどのくらいかかりますか?
一般的には術後8〜12か月が目安です。順天堂大学のデータでは8〜10か月が標準的とされています。複合損傷の場合はさらに時間を要し、12か月以上かかることも珍しくありません。可動域・筋力・パフォーマンステストすべてに合格してから復帰を判断します。
Q5. ACL+MCL複合損傷の場合、どちらから治療しますか?
多くの場合、まずMCLを装具で保存治療し、1〜2か月で治癒・可動域が改善した後にACL再建術を行います。MCLは血流が豊富で自然治癒が期待できる一方、ACLは関節内のため自然治癒せず手術が必要です。重症のMCL断裂では同時手術になることもあります。
Q6. 「不幸の三徴候」とは何ですか?
1950年に米国の整形外科医オドノヒューが報告した、ACL・MCL・内側半月板の3つが同時に損傷する状態を指します。急性スポーツ膝外傷の約25%に見られ、治療が複雑で予後不良のサインとされます。近年は外側半月板損傷の合併も多いと報告され、定義に議論があります。
Q7. ACL損傷を予防する方法はありますか?
はい。FIFA11+やPEP programなどの予防エクササイズが国際的に推奨されています。ハムストリングス強化、片脚バランス訓練、ジャンプ着地時に膝を内側に入れないフォーム練習、体幹トレーニングが中心です。特に女性アスリートの予防効果は科学的に証明されており、思春期からの導入が推奨されます。
Q8. 中高年でもACL損傷は起こりますか?
はい。スポーツ中だけでなく、階段の踏み外し、転倒、雪道での滑りなどでも受傷します。中高年の場合、半月板や軟骨の同時損傷率が高く、放置すると変形性膝関節症の進行が早まります。膝の腫れと不安定感が続く場合は整形外科でMRI検査を受けてください。
参考文献・出典
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]Unhappy triad of the knee- World Journal of Orthopedics, 2023;14(5):268 (Hoveidaei AH, et al.)
ACL+MCL+半月板複合損傷(不幸の三徴候)のシステマティックレビュー論文。
- [6]
- [7]
膝の健康を守るために
膝の健康を守るために、今日からできること
松山選手のような重度の靭帯損傷は突発的に起こりますが、日常の膝の違和感や軽度の痛みは、早めのセルフケアで進行を防げる可能性があります。
50代以降は、関節軟骨の摩耗や変形性膝関節症のリスクが高まる時期。膝の負担軽減と関節サポート成分の補給を日常に取り入れることで、長く自分の足で歩ける体づくりが始められます。
当サイトでは、膝の健康をサポートするサプリメントを整形外科的視点で徹底比較しています。グルコサミン・コンドロイチン・プロテオグリカン・MSMなど、成分ごとのエビデンスと配合量を専門家がチェック。膝のために本当に役立つ1本を、ぜひ見つけてください。
※サプリメントは医薬品ではなく、靭帯損傷や関節疾患の治療効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は必ず整形外科を受診してください。
まとめ|長期戦のリハビリを乗り越えて
パリ五輪銅メダリスト松山奈未選手の左膝ACL+MCL複合靭帯損傷は、女性アスリートに多い膝外傷の典型例であると同時に、複合損傷ゆえの複雑さを抱えたケガでもあります。本記事の要点を改めて整理します。
- 松山選手の診断は左膝前十字靭帯(ACL)損傷+内側側副靭帯(MCL)損傷。手術+リハビリへ専念
- 2本の靭帯が同時に切れる複合損傷は予後が複雑。MCLを先に保存治療し、ACLを後で再建するのが標準
- 女性のACL損傷率は男性の2〜3倍。Q角・ホルモン・神経筋制御の3要因が関与
- 競技復帰までは術後8〜12か月、複合損傷ではさらに長くなる傾向
- 長期リハビリの成否はメンタルマネジメントとリハビリの継続が握る。松山選手のSNS発信はその好例
- 「不幸の三徴候」(ACL+MCL+内側半月板)は急性スポーツ膝外傷の約25%に見られる
松山選手の今後の回復が順調に進むことを願うとともに、本記事が同じ膝のケガに向き合う全ての方の参考になれば幸いです。膝の健康は、年齢を問わず人生の質を大きく左右します。違和感を感じたら早めに整形外科を受診し、長く自分の足で歩ける未来を目指しましょう。
「強くなって戻ってきます」という松山選手の言葉は、リハビリ中の全ての人へのエールでもあります。
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